前座の頃だったか、それとも二ツ目に昇進したばかりの頃だったか、師匠方に連れられて浅草の居酒屋に行った時の事
お酒も入って御機嫌になった師匠方が一番先輩の小柳枝師匠をからかい出しました
「兄さんは変わってるとこあるんだよ、AB型だからなぁ」
「そうだ、小柳枝師匠はAB型でしたねぇ」
苦笑いをしている小柳枝師匠
それを聞いて黙っているのもなんなので私が
「実は私もAB型なんです」
すると、小柳枝師匠は
「そうか!花ちゃんもAB型か!」
私の手を取り喜んで下さいました。
稽古もつけて頂きました
飲んでいる時に何かの流れで『死神』の話題になりました
「師匠やられるんですか?」
「うん、今輔師匠に稽古つけてもらったんだよ」
「そうなんですか、それじゃぁ教えて頂けないでしょうか?」
数日後、今の小柳さんから
「うちの師匠から、兄さんに『死神』の稽古つけるから一緒に稽古つけるって言われたんですけど、うちの師匠『死神』やるんですか?」
「それがさぁ、聞いたこと無いけど頼んじゃった」
いま考えたら、とんでもなく失礼な話です。
師匠がよく飲みながら話をして下さったのは、相手が私だからかもしれませんが同じ四谷荒木町出身で学校の大先輩だった大師匠先代助六の思い出
年齢は近いが芸歴では先輩になる先代柳橋師匠や橘ノ圓師匠に対する感謝
それに最初の師匠である四代目柳好師匠の事
師匠が若い頃に『時そば』の中に新しいくすぐりを入れてみた事があったそうです、その時に柳好師匠に言われたのが
「欲張っちゃぁいけねぇぞ」
それともう一つ
「落語を信じなさい」
この二つはよく若手に仰っていたので師匠の中でも大切な言葉だったのではないでしょうか
そして私が師匠の仰った言葉で一番印象に残っているのは
「落語ってのは人間万歳、人間賛歌なんだよ」
まさにそれを体現されている師匠でした。
一度だけ師匠に褒めて頂いた事があります
地元でやっている地域寄席を師匠に助けて頂いた時のこと
会も盛況でお客様にも喜んで貰い打ち上げに
この打ち上げもお酒が入って大盛り上がり
「この会は私が行きつけにしてる飲み屋の常連さん達がやってくれてるんで、酒飲みばっかりなんです、すいません」
お詫び申し上げると師匠は満面の笑顔で
「うん!それが正しい噺家の生き方だ!」
以上、ちょっぴり自慢話でした。