月別アーカイブ: 2018年4月

都家歌六師匠のこと

新宿末広亭で私が出した靴を履きながら師匠は
「君は僕に昔の事を聞きたがるけど興味があるのかい?」
と聞かれました

「本を読んでもよく分からない、資料も残っていないような人に興味があるんです」
と答えると
「それじゃ僕とおんなじだ」

ニコッと笑われた師匠の顔が忘れられません

私にとって歌六師匠の生き方は憧れであり指針の一つでありました


レコードにしか残っていない明治大正の芸人の話は勿論、師匠がまだ正式に噺家になる前の名古屋の初代雷門福助門下で小福と名前を貰っていた頃の話
七代目助六、九代目里う馬、立花家万治、橘家米蔵、などなどあまり資料の残っていない芸人の思いで話など根掘り葉掘り色々な事を質問しました

前座仲間や師匠方からは「歌六師匠の話し相手は大変だな」なんて言われましたが私には夢のような時間でした

昭和40年代、三遊亭銀馬の『片棒』が面白いと聞いた師匠はすでに引退していた銀馬を
「私のお客さんに師匠の『片棒』を聞きたがってる人がいるんです」
と嘘をつき勉強会の高座に引っ張り出しました
その時の録音が、恐らく銀馬唯一のライヴ録音ではないでしょうか


五年ほど前に地元の松戸でやっている地域寄席を助けてもらいました
駅まで師匠を送る道すがら「今日はありがとう、友達ってのは良いもんだな」と言って頂きました
五十年以上後輩の私に洒落や冗談でなく本心でそう言ってくれる師匠でした

その地域寄席で師匠は落語『壁金』を一席喋りノコギリを演奏し私と対談までしてくれました
私の手元にはその時に録画した映像があります
師匠も持っていない演芸資料です


数十年後に「僕とおんなじだ」と言えるような後輩が現れたら楽屋で歌六師匠の話を色々したいと思います。

平成29年度『花形演芸大賞』銀賞(3月29日)

この度国立演芸場平成29年度『花形演芸大賞』の銀賞を授賞させて頂きました
何か賞を頂くのは中学生の時の『明るい選挙啓発ポスターコンクール』以来です

今後も御贔屓お引き立て並びに御指導御鞭撻よろしくお願い致します。

平成29年度花形演芸大賞決定のお知らせ