作成者別アーカイブ: 雷門 小助六

七月上席上野広小路亭後半 主任 (7月6日〜10日)

世間が騒々しい中を御来場頂きありがとうございました

入りも程よく、演者とお客様の距離も、お客様同士の距離もとることが出来たのでは無いかと思っています

五日間のネタは

初日『佃祭』

二日目『ねずみ』

三日目『木乃伊取り』

四日目『藁人形』

千穐楽『へっつい幽霊』

てな具合で梅雨から夏の噺、自分の好きな噺を色々と掛ける事が出来ました

又の御来場を心よりお待ちしております。

五日間の思い出 (11月15日)

初日『七段目』

初日『七段目』

師匠から稽古を付けて頂きました、師匠は先代からで先代は父親である六代目から。
真似する台詞が『仮名手本忠臣蔵』で通されているってのが雷門系の特徴、それと勘平と伴内の所作ダテの場面は先代が上方の演出を参考にしたんだと思っていましたが、小佐田先生の著書によると逆らしいです。

最も先代も六代目も若い頃に上方に居た事があるので、その頃に仕入れた演出方だった可能性もあります。


二日目『お見立て』

二日目『お見立て』

柳橋師匠から稽古を付けて頂きました。
芸協で『お見立て』と言えば柳橋師匠!、『お見立て』を習うなら柳橋師匠だと前座の頃から決めていました。
「茶殻が出てくる」くすぐりは先々代に当たる六代目柳橋先生が考えたものだと聞いた事があります。


三日目『井戸の茶碗』

三日目『井戸の茶碗』

小柳枝師匠から稽古を付けて頂きました。
小柳枝師匠は圓菊師匠からだそうで『井戸の茶碗』を付けて頂いた「圓菊師匠は恩人だ」とも仰っていました。
ご自宅で上げの稽古、小一時間の稽古の後に数時間飲ませて頂きました。
馬鹿話は記憶にありますが落語の話をしたかどうか


四日目『出世豆腐』

四日目『出世豆腐』

金太郎師匠に付けて頂きました。
師匠には前座の頃から本当にお世話になりました。
噺は他にも『胡椒の悔やみ』『もう半分』『百年目』『ねずみ』それにバレ小噺なんかも付けて頂きました。
師匠と住まいが沿線だからと言う理由で数え切れないほど仕事にも連れていって頂きました。

七月に取手の病院に入院していた師匠のお見舞いに伺った折りに「『徂徠豆腐』を覚えてくれ」と頼まれました。
『徂徠豆腐』は師匠が十八番にしていたネタでしたから「退院したら是非お願いします」と答えました。

八月に虎ノ門の病院にお見舞いに伺いバレ小噺を教わりながら「『徂徠豆腐』もお願いしますね」と軽口を叩くと「早い方が良い」との事
数日後に小柳さん桃之助さんと三人で稽古を付けて頂きました。
「覚えたら見てください」とお願いしたんですが「勝手にやって」と言われました。
「三人の覚えたての噺を立て続けに聞いたら健康な人間でも危ないですもんね」

お見舞いに伺ったのはそれが最後

師匠から「陰気なの嫌いだから明るくやってほしい」とのご指名で《お別れの夕べ》と《告別式》の司会をやらせて頂きました。
何処かで私が慌てるのを見ながら笑っていたと思います。

ネタ帳には『出世豆腐』と書くように言われました。


千秋楽『抜け雀』

千秋楽『抜け雀』

小柳枝師匠に付けて頂きました、師匠は先代柳橋師匠からだそうです。
浅草演芸ホールの三階で付けて頂きました。
やっぱり稽古の後に飲んだと思います、ただどんな稽古だったか覚えていないのです。
そんな感じの思いで、多いです。


魅知国定席《花座》12月下席前半

五日間の私のネタ

初日 一部『井戸の茶碗』 二部『禁酒番屋』 マルトク『風呂敷』
二日 一部『七度狐』 二部『試し酒』 マルトク『芝浜』
三日 一部『猫の災難』 二部『抜け雀』 マルトク『はてなの茶碗』
四日 一部『お見立て』 二部『芝浜』
五日 一部『木乃伊取り』 二部『井戸の茶碗』

次回は四月に独演会でお邪魔致します、まだまだやりたい噺もあります

御来場よろしくお願い致します!

都家歌六師匠のこと

新宿末広亭で私が出した靴を履きながら師匠は
「君は僕に昔の事を聞きたがるけど興味があるのかい?」
と聞かれました

「本を読んでもよく分からない、資料も残っていないような人に興味があるんです」
と答えると
「それじゃ僕とおんなじだ」

ニコッと笑われた師匠の顔が忘れられません

私にとって歌六師匠の生き方は憧れであり指針の一つでありました


レコードにしか残っていない明治大正の芸人の話は勿論、師匠がまだ正式に噺家になる前の名古屋の初代雷門福助門下で小福と名前を貰っていた頃の話
七代目助六、九代目里う馬、立花家万治、橘家米蔵、などなどあまり資料の残っていない芸人の思いで話など根掘り葉掘り色々な事を質問しました

前座仲間や師匠方からは「歌六師匠の話し相手は大変だな」なんて言われましたが私には夢のような時間でした

昭和40年代、三遊亭銀馬の『片棒』が面白いと聞いた師匠はすでに引退していた銀馬を
「私のお客さんに師匠の『片棒』を聞きたがってる人がいるんです」
と嘘をつき勉強会の高座に引っ張り出しました
その時の録音が、恐らく銀馬唯一のライヴ録音ではないでしょうか


五年ほど前に地元の松戸でやっている地域寄席を助けてもらいました
駅まで師匠を送る道すがら「今日はありがとう、友達ってのは良いもんだな」と言って頂きました
五十年以上後輩の私に洒落や冗談でなく本心でそう言ってくれる師匠でした

その地域寄席で師匠は落語『壁金』を一席喋りノコギリを演奏し私と対談までしてくれました
私の手元にはその時に録画した映像があります
師匠も持っていない演芸資料です


数十年後に「僕とおんなじだ」と言えるような後輩が現れたら楽屋で歌六師匠の話を色々したいと思います。